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小児科外来での抗菌薬適正使用について
 
 「小児科外来での抗菌薬の過剰な使用を控える」と同時に「必要な抗菌薬を必要な時に科学的根拠に基づいて使う」
​  
 抗菌薬の適正使用は2018年4月からの診療報酬改訂で、小児科医標榜医に初診時の追加点数として採用されました。これは世界的に「抗菌薬」(以前は「抗生物質」とよばれていました)の凄まじい使用がヒトの一般的な病気の治療のみならず、介護施設での利用、家畜のえさへの添加、養殖水産物からペットの飼育、食品への添加など様々な環境汚染といえるほどに乱用されていることへの対策の一環です。新しい抗菌薬や新しいワクチンの開発がすでに困難となった現代では、抗菌薬の乱用は薬剤耐性菌(抗菌薬の効かない細菌)を増加させる結果となっています。
抗菌薬による恩恵
 感染症の治療や患者さんの予後改善に多大な貢献をしています。
抗菌薬による不利益
 抗菌薬による副作用は、肝臓、腎臓など臓器の生理的に未熟な小児への影響が大きく、とくに腸内細菌叢に与える害は多大です。
 正常な腸管細菌叢では有害な細菌の侵入や繁殖を防ぎ、生態を適度に刺激しながら免疫状態を正常に保っています。このバランスが崩れると免疫力が低下し、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)を始めとする様々な病気を誘発し、ビタミンなど生体にとって必要かつ有利な物質の供給が停止します。腸内だけでなく、皮膚、鼻咽腔、口腔、泌尿器なで身体の各分野で不都合な結果を生じやすくなります。さらに最近では、喘息、アレルギー、肥満、精神面での不安定、慢性腎疾患の進展など多くの懸念が表明されつつあります。​
丸薬の山
日本小児科医会の声明 
2018/06/23 横浜
 抗菌薬の使用に際しては
#1.効果のない疾患に対する不必要な使用を厳に慎み、効果が期待される疾患にのみ、薬物動態(PK)力学を考慮し、さらに濃度依存的か曝露時間依存的かを考慮して適正に使用する。
 対象は感染症であり、
#2.治療の前に、ワクチン接種の徹底、手洗いの習慣、咳エチケットなどの感染予防に対する患者教育をしっかり行う。(一部、改変)
(参考)
#1. 第29回 日本小児科医会総会フォーラムinYOKOHAMA 
  シンポジウム2 小児科外来での抗菌薬使用を考える 
  日本小児科医会声明
#2.抗微生物薬適正使用の手引き
抗菌薬に対する一般人の意識調査結果が公表されました
 読売新聞 (2018/08/17)

​抗菌薬の正しい使い方について

 当院では抗微生物薬(抗菌薬・抗インフルエンザ薬など)の適正使用を推進するため「抗微生物薬使用の手引き」(厚生労働省健康局結核感染症課)を参考に薬剤の適正使用や普及啓発に取り組んでいます。

<具体的な取り組み>

 ①急性気道感染症(急性咽頭炎、急性気管支炎など)では、細菌やマイコプラズマによる感染が強く疑われる場合以外は最初から抗菌薬を投与しない。

 ②急性下痢症(急性胃腸炎、感染性胃腸炎など)では、細菌感染が強く疑われる場合以外は最初から抗菌薬を投与しない。

 ③細菌とウイルスを鑑別するために必要な検査をする。

以上です。

 なお、説明用のメモを院内に掲示し、配布資料も用意しましたので、ぜひご利用ください。

(参考)「抗菌薬」とは,以前は「抗生物質」と呼ばれていました。最近は「抗ウイルス薬(インフルエンザ、水痘など)」もよく使われますので、「抗微生物薬」という総称が用いられます。

急性気道感染症では、細菌やマイコプラズマによる感染が強く疑われる場合以外は抗生物質は投与しません
 
 急性気道感染症とは、咽頭炎・喉頭炎・副鼻腔炎・気管支炎・肺炎のことです。とくに乳幼児では、病気の初期はウイルスが原因のことが多く、抗生物質(抗菌薬ともいわれます)は効果がありません。また、検査よりも病気の経過や症状を正しく把握することのほうが大切です。水分補給を行って安静にすることが重要です。症状が強いときは症状を和らげるための治療(解熱薬、咳止め、鼻水止めなど)を行います。

<抗生物質を投与しないおおよその目安>

 ○ 基礎疾患がない

 ○ 全身状態が良好である

 ○ 食欲がある

 ○ 睡眠が取れている

 ○ 細菌合併がない

   □ RSウイルス    □ ヒトメタニューモウイルス

   □ アデノウイルス 

☆なお、溶蓮菌感染症、マイコプラズマ肺炎などでは疑い例も含めて最初から抗生物質を投与することがあります。

☆当院では抗生物質の適正使用を推進するため「抗微生物薬使用の手引き」(厚生労働省健康局結核感染症課)を参考に抗生物質の適正な使用や普及啓発に取り組んでいます。

松岡小児科医院(2018/05/01作成)

急性下痢症では、細菌感染が強く疑われる場合以外は抗生物質は投与しません
 

 急性下痢症とは、急激な発症から2週間以内で、普段の排便の状況よりも軟便または水様便が1日3回以上増加している状態です。「急性胃腸炎」や「感染性胃腸炎」などとも呼ばれることがあります。乳幼児期の原因の多くはウイルス感染です。主な症状は、突然出現する下痢・嘔吐・発熱などです。中には下痢が目立たずに、嘔吐だけが際立つこともあります。

 これらの症状は脱水を起こすため、まずは水分を十分に摂取することが重要です。治療の基本は対症療法です。発熱には解熱剤、嘔吐には吐き気止めが使用されますが、下痢に対する治療は整腸剤が基本となり、下痢止めは経過観察後、長期化する場合などに使われます。

 脱水が悪化した場合はボーッとしたりすぐに寝てしまうことがあります。意識がおかしいと思った場合は、受診して下さい。

<抗生物質を投与しないおおよその目安>

 ○ 基礎疾患がない

 ○ 全身状態が良好である

 ○ 食欲がある

 ○ 睡眠が取れている

 ○ 細菌合併がない  

   □ ノロウイルス    

   □ ロタウイルス   

   □ アデノウイルス 

 

☆なお、肉眼で血便を認める、便の細菌培養が陽性(病原性大腸菌)などでは疑い例も含めて最初から抗生物質を投与することがあります。

☆当院では抗生物質の適正使用を推進するため「抗微生物薬使用の手引き」(厚生労働省健康局結核感染症課)を参考に抗生物質の適正な使用や普及啓発に取り組んでいます。

松岡小児科医院(2018/05/01作成)

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